2017年2月8日水曜日

ソニーがEマウントのSTFを発表

前々からEマウントのSTFが噂にはなっていましたが、ようやく発表されました。4月に発売とのことです。STFレンズは以前(ミノルタ時代)からAマウントの135 mm F2.8 (T4.5)があり、他社の135にはない独自のボケを生み出す特別な存在です。今回Eマウントに100/2.8(T5.6)が加わり、ソニーのレンズラインナップをまた一段と魅力的なものにしています。

STFレンズが持つ個性的なボケ味には、アポダイゼーション(APD)フィルターの貢献が大きいのは明らかです。富士フイルムからはAPDフィルターを挟んだレンズが登場しており、サードパーティーですが既存のレンズに組み込むBBLシリーズの改造も存在して、ソニー以外でも輪郭がなめらかな描写を楽しめます。しかしSTFレンズのボケ味を完璧たらしめるものはAPDフィルターだけではありません。マスターレンズの周辺光量の豊富さこそがSTF 135を他を追随させない「完璧なボケ」を実現してると考えられます。PhotoZoneのレビューGANREFに載ってるDxO Analyzerの結果によれば周辺光量はかなり豊富ですが、これはAPDフィルター込みでの計測なので、マスターレンズの周辺光量は未知数です。しかしフィルター径がレンズの口径を決めるような望遠系で、135/2.0にも対応できる72 mmでしかも前玉がちゃんと大きいのにF2.8としているあたり、もしAPDフィルターを外しても周辺光量が多そうだと期待できます。

周辺光量が重要と考える理由ですが、まずAPDフィルターの存在の有無にかかわらず、一般のレンズでは絞り開放で周辺光量落ちが発生します。これは写真の持つ表情の一つで、映像効果として上手に活用するととても効果的なのですが、この原因にレンズの口径蝕が挙げられます。他にも考えられる理由はありそうですが、これまで見てきたレンズでは絞り開放における周辺光量落ちと口径蝕には強い関連がありそうでした。この口径蝕が発生すると点光源をボケとして写したときに、画面の中心部では綺麗な円なのに周辺部ではラグビーボールやレモンに形容されるような形状となってしまいます。APDフィルターは口径蝕を目立たなくすることはできるかもしれません。これは口径蝕は絞りを絞ると消えますが、APDフィルターは周辺部が暗くなっているのであたかも絞りを絞っているような効果がえられるからです。しかしこの周辺部の光を完全に遮断しているわけではなく、あくまで中心と比較すると相対的に低い透過率にしています。このためおそらく完全に口径蝕をなくすことはできません。マスターレンズの口径蝕が大きいと、絞りを開放では四隅だけボケの形状が崩れてしまいかねません。そうするとせっかくの綺麗なボケが四隅だけいびつになるというとても悲惨なことになってしまいます。このような状況ではAPDフィルター込みでも四隅だけ目立つ周辺減光を発生してしまうと考えられるので、絞り開放でも周辺光量落ちがほとんどないという計測結果(PhotoZoneGANREF)は周辺部においてもSTF特有の描写が維持されるということを示しているように思います。言い換えると中心も周辺も均一なボケを得られるはずで、実際のレンズの評価もこの考えを裏付けています。

以上からソニーのSTFレンズにおいてAPDフィルターの存在はとても重要であるが、マスターレンズの周辺光量が豊富であることも同様に重要な要素であるようです。ポン付けのBBLには135フルサイズ機で使用する場合、周辺部で描写が乱れることが記載されていて、原則はAPS-C向けとしています。このあたり特に135フルサイズで使う場合には「純正STF」に強みがあるようです。EマウントのSTFは100/2.8でフィルター径が72 mmというこれまた過剰とも思えるサイズなので、かなり期待できそうです。発売されればいろんな例が上がってくるでしょうから、今から楽しみです。

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